「おせちは家族限定ですから」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが静かに崩れた。
「お父さんたちは白米だけで十分でしょう? 炭水化物の方が体にいいってネットにも書いてありましたし」
息子の嫁、田村さやかは、笑顔のままそう言った。
けれど、その笑顔には温かさがなかった。
私は田村とし子、67歳。
隣に座る夫、田村カツオは71歳。
私たちはその日、息子夫婦の家で久しぶりに家族そろって正月を迎えるはずだった。
11月の終わり、さやかから電話が来た。
「今年のお正月は、うちで一緒に過ごしませんか?」
その声は優しかった。
「陸も、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたがっています」
孫の名前を聞いた瞬間、私は嬉しくなった。
夫と相談し、手土産を選び、お年玉も用意した。
カツオは車を運転しながら笑った。
「今年こそ、ゆっくり弘人と話せるといいな」
私は頷いた。
けれど、なぜか胸の奥には小さな違和感が残っていた。
その予感が現実になるまで、時間はかからなかった。
元日の午前10時。
息子夫婦のマンションに到着すると、私は紙袋を抱えながらインターホンを押した。
扉が開いた。
「……来たんですね」
さやかは笑った。
けれど、歓迎している表情ではなかった。
玄関には新しいスリッパが並んでいた。
しかし、私たちに渡されたのは少し古びたものだった。
リビングへ入ると、息子の弘人と孫の陸がソファに座っていた。
「明けましておめでとう」
私が声をかけても、陸はゲーム画面から目を離さなかった。
弘人もスマホを見たまま、
「うん」
と短く返しただけだった。
胸が少し痛んだ。
それでも私は笑顔を作った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=qxewurGUMvo,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]