「お母さんには、今日中に出て行ってほしいんです」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが崩れ落ちる音がしました。
大晦日の午後三時。
雪が静かに舞い始めた寒い日のことでした。
私は高橋美智子、六十八歳。
三十五年間、地方銀行で働き、最後は副支店長として定年を迎えました。
人を見る目だけは、誰にも負けないと思って生きてきたつもりでした。
しかし、まさか自分の家族の本心を見抜けなかったとは、その時の私はまだ気づいていませんでした。
夫は数年前に脳梗塞で亡くなりました。
無口で不器用な人でしたが、誰よりも家族を大切にする優しい人でした。
亡くなる少し前、夫は私の手を握りながらこう言いました。
「美智子、俺に何かあっても、息子たちに頼りすぎるな」
当時は意味が分かりませんでした。
けれど今思えば、夫は何かを感じ取っていたのかもしれません。
この家は、夫が三十年前に建てた家でした。
土地は私の父から相続したもの。
建物も夫が亡くなった後、私が正式に相続しています。
つまり、この家の所有者は私でした。
ただ、その事実を息子夫婦には詳しく話していませんでした。
息子の浩輝は四十三歳。
中堅メーカーの営業課長として働いています。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=8uKJIusqTaI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]