私の五十八歳の誕生日。
夫に先立たれてからというもの、「おめでとう」と言ってくれる相手は、年々少なくなっていた。それでも毎年、息子の大介だけは短いメッセージをくれていたから、今年もそれを待っていた。
ところが、届いた通知に表示された名前は――嫁の美咲だった。
「珍しいわね。お祝いでも?」と、少しだけ期待して開いた私は、次の瞬間、視界が白くなった。
『もう嫌。あんなおせっかい義母マジで消えてほしいw』
……息が止まった。
お祝いの言葉どころか、私の存在そのものを否定する文面。しかも語尾の「w」が、冗談のように軽くて、いっそう残酷だった。
すぐに理解した。これは本来、大介に送るはずだった悪口を、間違えて私に送ってしまったのだ。
思えば、私はずっと「役に立ちたい」という名目で、息子夫婦の生活に踏み込んでいたのかもしれない。
私は伊藤綾子。スーパーのレジでパートをしながら、小さな一軒家で一人暮らしをしている。
趣味は懸賞応募だ。和牛のすき焼きセットや、たこ焼き器を当てたこともある。若い頃は、いつか夫と二人で旅行に行くのが夢だったが、その夫はもういない。夢だけが、手元に残っていた。
大介が結婚し、孫のりんが生まれてから、私は時折マンションを訪ねた。行く前には必ず連絡を入れ、「欲しいものある?」と聞いた。おむつを頼まれれば買い、育児で疲れているだろうと思えば惣菜を作って持って行った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=P56QV1QyCCw,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]