「車は大丈夫ですか?」
電話の向こうから聞こえた最初の言葉は、意外なものだった。
「修理できますか?」
ではなく、
「お身体は大丈夫ですか?」
だった。
その日、1台の大切な車が大きな事故に遭った。
場所は圏央道厚木ジャンクション付近。
合流地点での出来事だった。
写真を見るだけでも分かるほど、車の後方部分は大きく損傷している。
赤いボディには深いへこみ。
リア部分は変形し、ガードレールに接触した跡が残っていた。
愛車の名前はRX-8。
ただの移動手段ではない。
オーナーさんが長い時間をかけて大切に維持してきた1台だった。
ディーラーで定期的にフルメンテナンスを受けていた。
走る楽しさを大切にしながら、丁寧に乗り続けていた車。
だからこそ、事故現場の姿を見た時のショックは計り知れなかった。
しかし、不幸中の幸いだった。
運転していたオーナーさんに大きなケガはなかった。
何より、それが一番だった。
実は以前、このRX-8とは別の縁があった。
ディーラーでは対応できなかったエアコン修理を、一度だけ担当したことがあった。
その時から車を大切に扱うオーナーさんの姿勢を知っていた。
だから今回、突然の連絡を受けた時も他人事ではなかった。
「ディーラーが定休日で困っています」
事故後、頼れる場所が限られている中で、連絡をくれた。
車好きにとって、愛車が傷つく瞬間は本当に辛い。
まして長年大切にしてきた車ならなおさら。
でも、こんな時こそ本当に必要なのは、ただ修理する人ではない。
車の状態を見て、
オーナーの気持ちまで理解してくれる人だと思う。
現場の状況を確認。
損傷箇所を一つずつ確認。
今後の修理方法について説明。
写真だけでは判断できない部分も多い。
ボディの傷だけではなく、内部フレームへの影響。
足回りへのダメージ。
安全に乗れる状態へ戻せるか。
確認すべきことはたくさんある。
しかし、最初に確認すべきことは車ではなかった。
「人が無事だったか」
だった。
今回の事故で改めて感じたこと。
どれだけ大切な車でも、命には代えられない。
車は直せる可能性がある。
でも、人の身体は簡単には戻らない。
RX-8は大きな傷を負った。
でも、オーナーさんが無事だったこと。
そして、困った時に相談できる場所があったこと。
それが何よりだった。
これから修理の道のりが始まる。
元の姿に戻れるのか。
どこまで復活できるのか。
まだ分からない。
でも、長く愛された車には、もう一度走り出す力がある。
そしてその横には、車だけではなく「人の想い」まで大切にする整備士がいる。
事故は突然起こる。
だからこそ、普段から信頼できる人とのつながりを持つことの大切さを感じた出来事だった。