夫の元妻は、不倫相手と暮らすため、当時まだ小学生だった2人の子どもを置いて家を出た。
その数年後、私は夫と出会った。
結婚を決めたとき、子どもたちからすぐに「お母さん」と呼んでもらえるとは思っていなかった。食事を作り、学校行事に参加し、熱を出せば朝まで看病した。それでも、本当の母親の代わりになろうとはしなかった。
ただ、この家を安心して帰れる場所にしたかった。
反抗期には激しく言い合い、進学費用をめぐって夫と何度も話し合った。やがて2人とも成人し、それぞれの道を歩き始めた。
その間、元妻から連絡は1度もなかった。
ところが最近、突然連絡が入った。
元妻の父親、つまり子どもたちの祖父が危篤だという。
「最期になるかもしれない。会いに来てほしい」
本音では、行ってほしくなかった。
けれど、私自身も親を亡くした経験がある。後悔を残してほしくなくて、私は子どもたちの背中を押した。
「会いに行っておいで」
それをきっかけに、元妻と子どもたちの交流が始まった。
食事へ行き、連絡を取り合い、母の日にはプレゼントまで渡したらしい。
その話を聞いた夜、胸の奥に黒い感情が広がった。
幼い2人を置いて出て行ったのに、なぜ今になって母親の顔をするのか。私は何年も悩み、泣き、必死に育ててきたのに。
そんなある日、元妻が家にやってきた。
「これからは実の母親として、子どもたちとの時間を取り戻したいんです」
さらに、家族だけで旅行したいから、私には遠慮してほしいと言った。
私は言い返そうとしたが、成人した娘が先に口を開いた。
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