今朝は宅配便を受け取る予定だった。
配達日時まで指定し、家で待つつもりだったのに、出発直前になって急用が入ってしまった。
時間を変更しようとしたが、すでに配達中になっている。
再配達をお願いするのも申し訳ない。
迷った末、私は玄関のドアに手書きの伝言を貼った。
「佐川急便さま。いつも配達ありがとうございます。日時指定をしたにもかかわらず、急用ができてしまいました。
ポストに入りそうであればポストに、無理でしたらドア横に置配でお願いいたします。ごめんなさい」
文章の横には、少しでも気持ちが伝わればと思い、猫の絵も描いた。
もちろん、必ず置いてもらえるとは思っていなかった。荷物の種類や配達条件によっては、持ち帰りになるかもしれない。
用事を済ませ、夕方に帰宅した。
ところが、玄関の横には荷物がない。
「やっぱり置配はできなかったんだ」
そう思ってポストを見ると、白い紙が1枚入っていた。
不在票だろうと取り出した瞬間、思わず笑ってしまった。
紙には配達員さんの手書きで、こう書かれていた。
「いつもありがとうございます。お荷物は人目につかない場所に置かせていただきました」
その下には、私が描いた猫に似せた小さな猫の顔。
吹き出しには「大丈夫だニャ」と書かれていた。
私は慌てて玄関周辺を確認した。
荷物は通りから見えない物陰に置かれ、雨にぬれないよう丁寧にビニールで包まれていた。
外からは見えない。
けれど、私にはすぐ分かる場所だった。
伝言を読んだ配達員さんが、周囲を確認しながら置き場所を考えてくれたのだろう。
中身もまったく問題なかった。
日時を指定したのはこちらなのに、急に留守にしてしまったのもこちらの都合だ。それでも配達員さんは、責めるような言葉を1つも書かなかった。
たった数行の返事なのに、慌ただしかった一日の疲れが少し軽くなった。
私はすぐに営業所へ連絡した。
苦情ではなく、担当してくれた配達員さんへお礼を伝えるためだった。
電話口の方は少し驚いた後、「本人にも必ず伝えます」と答えてくれた。
数日後、別の荷物を届けに来たのは同じ配達員さんだった。
私がお礼を言うと、照れくさそうに笑った。
「猫の絵がかわいかったので、つい返事を描いてしまいました」
忙しい配達の途中で、人目につかない場所を探し、短い返事まで残してくれた。
大きな出来事ではない。
けれど、誰かの小さな気遣いが、その日を温かい思い出に変えることもある。
あの猫の返事は、今も捨てずに大切に取ってある。
佐川さん、本当にありがとうだニャ。