「警察官が制服のまま牛丼を食べるなんて、勤務中にさぼってるの?」
昼どきの牛丼店で、後ろの席の男性が大きな声を出した。
カウンターには、制服姿の女性警察官が1人。
運ばれてきた牛丼を、静かに食べていた。
「せめて持ち帰れよ。税金で給料もらってるんだろ」
男性の言葉に、店内の空気が張りつめた。
女性警察官は箸を止めた。
「休憩時間を利用しています。
ご不快にさせてしまったなら申し訳ありません」
丁寧に頭を下げたが、男性は納得しなかった。
「だったら着替えて来いよ。制服で食事してる姿を見せるな」
隣の席にいた私は、胸の奥がざわついた。
休憩中の食事に、何をそこまで責める必要があるのか。
警察官だって、お腹はすく。
店員が困った様子で声をかけた。
「お客様、ほかの方のご迷惑になりますので……」
「迷惑なのは警察官だろ。こっちは落ち着いて食べられないんだよ」
女性警察官は、ほとんど手をつけていない牛丼を見つめた。
そして財布を出し、静かに席を立とうとした。
そのときだった。
店の入口付近で、小さな子どもの泣き声が響いた。
「お母さん……お母さん……」
4歳くらいの女の子が、1人で立ち尽くしていた。
買い物客の往来が多い商業施設の中だ。
はぐれてしまったらしい。
誰かが動くより早く、女性警察官が少女の前にしゃがんだ。
「大丈夫だよ。お名前を教えてくれる?」
少女は泣きながら、かすれた声で答えた。
女性警察官は店員に協力を頼み、少女が最後に母親といた場所を確認した。
続けて、近くの施設スタッフへ連絡するよう依頼した。
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