毎月25日になると、義父の口座から私名義の口座へ、決まって1万円が振り込まれていた。振込メモの欄には、いつも「がくひ」とだけ書かれている。
私には、前の結婚で生まれた娘が一人いる。今の夫との間には子どもがなく、義父にとってその娘は、血のつながらない孫にあたる。振込は、私たちが再婚した直後から始まっていた。金額も日付も、これまで一度も変わったことがなかった。
「学費の足しにって、親父が勝手に決めてるだけだから」
夫にそう聞かされても、それ以上詳しい事情までは教えてもらえなかった。義父自身に理由を尋ねても、「気にしなくていい、じいちゃんの気まぐれだから」と、いつも笑って流されるだけだった。
娘が中学に上がる年の春、義父から突然、一枚の古い封筒を渡された。中には、これまでの振込の記録が細かく書かれた通帳と一緒に、色あせた一枚の写真が入っていた。写っていたのは、若い頃の義父と、見覚えのない小さな女の子だった。
「実はな」
義父は、少し遠くを見るような目で、その写真の話をしてくれた。義父には、亡くなった前妻との間に、幼くして病気で亡くした娘が一人いたのだという。
生きていれば、ちょうど今の私の娘と同じくらいの年頃になっていたはずだった。
「あの子に、してやれなかったことを、少しでもこの子にしてやりたくて」
血のつながりがないことは、義父にとって最初から関係なかったのだという。娘が生まれたときから、義父はずっと、亡き娘の代わりというより、ただ一人の孫として、静かに支え続けてきたのだった。
「学費なんて言ってるけど、本当は何に使ってくれてもいいんだ」
義父はそう言って、少し照れたように笑った。血のつながりよりも大切な何かが、そこには確かにあった。私は、その通帳と写真を、娘が大人になったとき自分で読めるように、大切にしまっておくことにした。