バスの車内で、一人の男性が静かに立ち上がった。
その日は、彼にとって人生を左右する大切な日だった。
32歳の遠藤俊介は、12社目となる会社の最終面接へ向かっていた。これまで11社に応募し、すべて不採用。何度も履歴書を書き直し、何度も面接で落ち続けた。
「これが最後のチャンスかもしれない」
そう思うほど、彼の心には不安が重くのしかかっていた。
俊介は決して口が上手い人間ではなかった。自分の気持ちを言葉にすることが苦手で、人付き合いも得意ではない。
しかし、彼には誰にも負けないものがあった。
行動で示す誠実さだった。
前職ではシステムエンジニアとして働き、社内評価でトップになった経験もある。だが、一年前、身に覚えのない横領疑惑をかけられ、会社を去ることになった。
本当の犯人は上司の黒田だった。
黒田は、自分より若い俊介が評価されることを快く思っていなかった。そして、自分の罪を俊介に押し付けたのだ。
しかし、口下手な俊介はうまく説明できなかった。
結果、彼はすべてを失った。
それでも、俊介には守りたい家族がいた。
母の美咲、58歳。
数年前の事故で車椅子生活になった母を、俊介は一人で支えていた。
車椅子でも移動しやすいように工夫し、家事も積極的にこなし、休日には必ず母を外へ連れ出した。
ある休日、海沿いの道を車で走っていた時、美咲は優しい声で言った。
「俊介、そろそろ彼女でも作ったら?」
「急にどうしたんだよ」
「あなた、私のことばかり気にしてるでしょう。私のせいで結婚できないんじゃないかって心配なの」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=YGZ9upx2mhQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]