祖父が亡くなり、相続手続きのために遺品を整理していると、使われないまま保管されていた古い通帳が3冊出てきた。長年記帳されていなかったため、まずは金融機関の窓口で最新の状態に記帳し直すことになった。祖父は生前、几帳面な性格で知られており、家計簿もきちんとつけていた人だったので、通帳を放置していたこと自体が少し意外だった。
窓口では、久しぶりの記帳ということで、通常より少し時間がかかると案内された。
窓口で受け取った通帳を開くと、見覚えのない出金の記録がいくつも並んでいた。毎月決まった額ではなく、不定期に、数千円から一万円程度の金額が、少しずつ引き出されていた。全体を合計すると、20年分でおよそ38万円になった。用途を示すようなメモは、通帳のどこにも記載されていなかった。窓口の担当者に相談すると、「昔の通帳ですと、記帳が飛んでいることも珍しくありません」と言われたが、それにしても20年間、一度も記帳せずに使い続けていたというのは、几帳面な祖父らしくない振る舞いだった。
祖母に尋ねてみても、「そんな引き出し、心当たりがないわねえ」と首をかしげるばかりだった。
通帳の名義は祖父本人のもので、印鑑も自宅の引き出しにきちんと保管されていた。祖父以外の誰かが勝手に使っていたとは考えにくかった。銀行の担当者にも確認してみたが、「ご本人様が窓口で直接引き出された記録になっています」とのことで、不正な引き出しの可能性は低いとのことだった。念のため防犯カメラの保存期間についても尋ねてみたが、さすがに20年前の映像が残っているはずもなかった。
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