娘の口座を確認していて、毎月28日に決まって1万円の入金があることに気づいた。振込人の名義を見ると、独身で一人暮らしをしている妹だった。
「毎月お祝いみたいなものだから、気にしないで」
妹に理由を尋ねると、そう軽く返されるだけだった。それでも気になって、娘名義の通帳を最初のページから見返してみた。すると、一番古い入金日は、娘が生まれた年の同じ月の28日だった。
つまり、娘が生まれてから十五年間、妹は一度も欠かさずこの振込を続けていたことになる。
妹は結婚しておらず、決して余裕のある暮らしをしているわけではない。それなのに、毎月きっちり1万円を送り続けている理由が、私にはどうしても分からなかった。
「無理しなくていいのに」
そう伝えても、妹は「気持ちの問題だから」と言って、それ以上は詳しく話そうとしなかった。実家の母に聞いてみたが、母も詳しい事情は知らないようで、「あの子、昔から自分のことは何も話さない子だったから」とだけ言われた。その一言が、なぜか妙に引っかかった。
数週間後、妹の部屋に立ち寄る機会があった。片付けを手伝っていると、本棚の隅から古いアルバムが出てきた。
開いてみると、表紙の裏に、娘の名前と同じ漢字が書かれた、赤ちゃんの写真が一枚貼られていた。ただし、写っている赤ちゃんは、うちの娘ではない。
問いただすと、妹はようやく重い口を開いた。娘が生まれるより一年前、妹には妊娠していた時期があり、当時の交際相手との間に、生まれてくるはずだった子どもがいたのだという。事情があって、その子を産むことは叶わなかった。
もし生まれていたら付けたかった名前を、姉である私は、偶然にも自分の娘に付けていた。
「あの子の分まで、って思ってたのかもしれない」
妹は静かにそう言って、目を伏せた。誰にも言わずに抱えてきた十五年の重みを、私はその日初めて知った。
「これからは、一人で背負わなくていいから」
私はそれだけを伝えた。次の28日、妹はいつも通り1万円を振り込んできた。
金額を変える気は、まだなさそうだった。