妻が「もう何も期待していない」と言った夜、和夫は初めて、自分の家の静けさが平穏ではなかったことに気づいた。
兵庫県の静かな住宅街で、71歳の和夫と68歳の節子は暮らしていた。結婚して45年。長男も長女も独立し、夫婦2人だけの老後になっていた。
和夫は65歳まで機械部品の会社で真面目に働き、給料も家に入れ、浮気も浪費もしなかった。だから自分は悪い夫ではないと思っていた。
節子も、夫が家族を支えてくれたことには感謝していた。けれど、感謝と寂しさは別のものだった。
若い頃の節子は、よく話す人だった。子供の学校のこと、近所で見つけた店、家計、親の体調、老後に行きたい場所。夕食の時間、節子は一日の出来事を夫に話した。
だが和夫の返事はいつも短かった。
「そうか」
「後にしてくれ」
「テレビが聞こえない」
和夫に悪気はなかった。仕事で疲れていたし、家では休みたかった。妻の話は明日でも聞けると思っていた。
けれど、その明日は何十年も来なかった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=i-sy52-p_gY&t=1s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]