北東北の深い山々に囲まれた場所に、第十二師団が管理する保養施設「拳会館」はあった。
そこは連隊幹部や軍属、そして関係者だけが利用できる特別な施設だった。
梅雨入り前の重苦しい空気が漂う昼前。古びた建物の奥にある個室から、肉の焼ける香ばしい匂いと、下品な笑い声が響いていた。
「おい、田中。何をしているんだ。肉の焼き方も分からないのか?」
鉄板の上では高級和牛のロースが焼かれていた。
赤ら顔で箸を振り回している男は、制服ではなく派手なポロシャツ姿。第五十一連隊の軍需担当官、佐藤五級軍属だった。
その向かいで汗を流しながら肉を焼いているのは、戦闘服姿の三等陸曹、田中賢治。
彼は兵士課長として真面目に勤務していたが、佐藤の権力に逆らえず、言われるまま動かされていた。
「申し訳ありません、担当官……」
田中が頭を下げると、佐藤は満足そうに酒を飲んだ。
「まあいい。それより聞いたか? 今日来る新しい師団長の話だ」
「はい。かなり厳しい方だと聞いています」
「女の師団長だろ?」
佐藤は鼻で笑った。
「最近は男女平等だ何だとうるさいからな。
上層部が格好だけ整えるために送ったんだろう。女が階級章を付けたところで、何ができる」
佐藤はそう言いながら、さらに肉を追加で焼かせた。
彼がこの場所で好き放題できる理由はあった。
二十年以上、第十二師団に居座り続け、納入業者や工事業者と癒着。幹部が入れ替わっても、自分だけは地位を守り続けてきたのだ。
周囲の将校たちは彼を恐れ、若い隊員たちは逆らうこともできなかった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ME-4odaFpP8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]