買い物を終えて駐車場へ戻った時だった。
車のフロントガラスに、見覚えのない細長い紙が挟まっていた。
最初は広告かと思った。
ところが手に取って読んだ瞬間、足が止まった。
「駐車時にこちらのタイヤが、運転席側の後部ドアに接触した可能性があります」
そんな内容が、丁寧な文字で書かれていた。
さらに、
「傷や損傷は目視では確認できませんでしたが」
と続き、最後には連絡先まで残されていた。
私はすぐ車の後部ドアへ回った。
光の角度を変えながら何度も確認したが、傷らしいものは見当たらない。
それでも車のことは素人判断では分からない。
小さなへこみや塗装の傷がある可能性もある。
正直、最初は少しモヤモヤした。
「ぶつかったなら、その場で待っていてくれればよかったのに」
そう思ったのも事実だ。
しかしメモをもう一度読むと、考えが少し変わった。
本当に逃げるつもりなら、わざわざ自分から連絡先を書く必要なんてない。
しかも「傷はないと思います」で終わらせず、
「接触した可能性があります」
と正直に残している。
私はそのままディーラーへ向かった。
事情を説明すると、担当者がライトを当てながら後部ドアや周辺を細かく確認してくれた。
数分後。
「大丈夫ですよ。傷もへこみも確認できません」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けた。
修理の必要もない。
車にも問題はなかった。
これで終わりにしてもよかった。
けれど、メモを書いた人は今頃、
「傷がついていたらどうしよう」
「高額な修理代になったら……」
と不安になっているかもしれない。
そう思い、私はメモに書かれていた番号へ電話した。
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