親戚が集まった日のことだった。
私はいつものように座敷を行き来しながら、お茶を配っていた。
「和也も立派な家を持つようになったものね」
親戚の一人が、部屋を見渡しながら感心したように言った。
その瞬間、義母の節子は誇らしげに胸を張った。
「そうでしょう? 本当に息子は頑張ったのよ。この家も息子の家だから、私も気軽に遊びに来ているの」
私は湯飲みを置く手を止めそうになった。
隣に座っていた夫の和也は、困ったように笑うだけで何も言わない。
まるで、その言葉を否定する必要などないと思っているようだった。
けれど、私は知っている。
この家が誰のものなのか。
そして、彼らがまだ知らない大きな事実を。
戸棚の奥には、私名義の権利書と固定資産税の通知書が大切にしまわれていた。
この家は、和也が建てたものでも、節子が守ってきたものでもない。
私が独身時代、血のにじむような努力で手に入れた、私だけの居場所だった。
和也と結婚したのは十年前。
子どもはいなかった。
神奈川県の静かな住宅街にある古い一軒家。
駅から徒歩十五分ほどの場所にあり、庭は小さいけれど、南向きで日当たりが良い。
玄関の引き戸は少し重く、古い木の匂いが残っている。
休日の朝、私は庭の花壇を手入れしながら温かいお茶を飲む時間が好きだった。
二階には六畳ほどの小さな書斎がある。
窓から遠くの山を眺めながら、一人で過ごせる大切な場所だった。
この家を買うために、私は若い頃から必死に働いた。
同僚が旅行や買い物を楽しんでいる時も、私は節約を続けた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AcAIxpXBXaY,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]