昼休み、会社の休憩室で同僚の田中がスマホを見ながら突然言った。
「これ絶対おかしいだろ。店員が3000円抜いてるじゃん」
画面に出ていたのは、こんな問題だった。
「たかし君は1万円持って買い物に行きました。タバコを1000円、お酒を1000円、白い粉を5000円買いました。しかし、おつりを貰えませんでした。なぜでしょう?」
1000円+1000円+5000円=7000円。
確かに、1万円を出したのなら3000円返ってくるはずだ。
田中は得意げに言った。
「ほら、3000円足りない。こんなの店側のミスだろ」
すると別の同僚も、
「“白い粉”って書いてあるから、怪しい取引だったんじゃない?」
と笑い始めた。
話はどんどん大げさになり、
「裏で3000円の手数料を取られた」
「税金がかかった」
「実は1万円札が偽物だった」
など、珍回答まで飛び出した。
その時、新人の佐藤さんが静かに言った。
「でも問題文には、“1万円札を出した”とは書いてないですよね?」
一瞬、全員が黙った。
田中は眉をひそめた。
「いやいや、1万円持って行ったんだから、普通1万円札だろ?」
佐藤さんは首を振った。
「“1万円持っている”と“1万円札を持っている”は別です」
そしてホワイトボードに、
1000円
1000円
5000円
と書いた。
「例えば、たかし君が5000円札1枚と1000円札5枚を持っていたとします」
合計は確かに1万円。
まずタバコ1000円に、1000円札を1枚。
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