「えっ、ちょっと待って! 危ない!」
ホームにいた誰かの声で、私は思わず振り返った。
すでに発車した新幹線のすぐそばに、子どもを連れた母親が立っていたのだ。
母親は何度も頭を下げながら、動き始めた車両へ近づいていく。
どうやら写真を撮っている間に乗車時間を過ぎてしまったらしい。
「お願いします! 乗せてください!」
必死な様子だった。
子どもも不安そうに母親の横に立っている。
その直後、新幹線は停止した。
ホームにいた人たちから、
「止まった……」
という声が漏れた。
母親は安心したようにドアの前へ移動し、もう一度深く頭を下げた。
私はてっきり、ドアが開くのだと思った。
しかし――開かなかった。
母親は何度も車内を見ながら合図を送る。
それでもドアは閉じたまま。
すると近くにいた男性が、
「子どももいるんだから開けてあげればいいのに」
と言った。
別の女性も、
「もう止まってるんだから、1回くらいいいじゃない」
と続ける。
確かに、目の前だけを見ればそう感じる人もいると思う。
だが私は反対だった。
新幹線は1人だけの乗り物ではない。
車内には何百人もの乗客がいる。
時間通りホームへ来て、ルールを守って乗車した人たちだ。
もし「乗り遅れても車両に近づけば止めてもらえる」と思う人が増えたらどうなるのか。
何より怖いのは、動いている列車へ人が近づくことだ。
今回は止まったからよかった。
しかし、毎回同じ結果になる保証などない。
やがて係員が母親に近づき、列車から離れるよう促した。
母親は納得できない様子で、
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