「たった5分だろ。お前に何の関係がある?」
白い車の持ち主は、悪びれる様子もなく私をにらみつけた。
だが、その車は駐車枠の中に収まっていなかった。
右側のタイヤが白線を大きく越え、車体の半分近くが歩道にはみ出していた。
歩行者が普通に通れる幅は、ほとんど残っていない。
私がその駐車場の前を通りかかった時、ちょうどベビーカーを押した女性が近づいてきた。
彼女は白い車の前で立ち止まった。
歩道には、ベビーカーを通せる隙間がない。
仕方なく車道側へ降りようとした、その瞬間だった。
後ろから来た車が、すぐ近くを走り抜けた。
女性は慌ててベビーカーを引き戻した。
中にいた赤ちゃんが驚いて泣き出した。
私は思わず、車から少し離れた場所にいた男性へ声をかけた。
「すみません、この車の持ち主ですか?」
男性は面倒そうに振り返った。
「そうだけど?」
「歩道を塞いでいます。危ないので、停め直してもらえませんか?」
私はできるだけ落ち着いて伝えた。
しかし男性は、鼻で笑った。
「すぐ戻るつもりだったんだよ」
「みんな横を通れるだろ」
通れないから、ベビーカーが車道へ出ようとしたのだ。
私がそのことを指摘すると、男性はさらに声を荒らげた。
「だったら反対側を歩けばいいだろ!」
「こういう正義感を振りかざす奴、本当に面倒なんだよ」
近くにいた人が、小声で私に言った。
「もう関わらないほうがいいですよ」
「何をされるか分かりませんから」
確かに、男性は今にも詰め寄ってきそうな勢いだった。
だが、ここで引けば、また誰かが車道へ追い出される。
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