「退去費用は55万円です」
45年間暮らした3DKの実家を明け渡した数日後、管理会社から届いた請求書を見て、私は言葉を失った。
見積額は税別50万7500円。
消費税を含めると、およそ55万円になる。
畳10.5畳の表替え12万6000円、障子ガラス16枚7万2000円、網入りガラス4万円、押し入れ中段の復旧4万7500円。
さらに襖、浴室塗装、美装工事、資材運搬費、諸経費まで並んでいた。
確かに、母は室内で長年タバコを吸っていた。壁のヤニ汚れは強く、キッチンのクッションフロアには焦げ跡もある。
押し入れの中段も、母が許可を取らずに外していた。
すべて経年劣化で済むとは思っていない。
それでも、45年使った畳や設備を新品へ交換する費用まで、全額こちらが負担するのは納得できなかった。
管理会社へ電話すると、担当者は言った。
「汚れや破損がありますので、一式交換です」
「経過年数は考慮されていますか?」
私が尋ねても、「見積書のとおりです」と繰り返すだけだった。
そこで私は、その場で支払う約束をせず、各項目の写真、施工範囲、負担割合の根拠を文書で出してもらった。
同時に、45年前の賃貸借契約書、台風後に網入りガラスのひびを連絡した手紙、引っ越し業者が障子ガラス4枚を割った際の事故確認書を探し出した。
さらに国土交通省の原状回復ガイドラインを確認し、消費生活相談窓口にも相談した。
経年変化や通常損耗は原則として貸主側の負担。借主に責任がある傷や汚れでも、設備の経過年数や必要最低限の施工範囲を検討する必要があると教えられた。
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