問題は、たった3行だった。
「ノートと鉛筆の合計は100円です」
「鉛筆はノートより40円安いです」
「鉛筆はいくらですか?」
私はほとんど反射的に、
「60円」
と答えた。
100円から40円を引けば60円。
あまりにも簡単な問題に見えたからだ。
ところが、その答えでは条件が成立しない。
鉛筆が60円で、ノートが鉛筆より40円高いなら、ノートは100円になる。
すると合計は、
60円+100円=160円。
100円にはならない。
ここで初めて、「40円安い」という言葉の意味を取り違えていたことに気づく。
鉛筆の値段を「□円」とすると、ノートは「□+40円」。
2つを合わせて100円だから、
□+(□+40)=100
2×□=60
□=30
つまり、鉛筆は30円。
ノートは70円で、確かに鉛筆より40円高い。
30円+70円=100円となり、すべての条件が一致する。
「100-40=60」という計算そのものは間違っていない。
ただし、その60円は鉛筆の値段ではなく、2つの商品の価格差を除いた残りだ。
その残りを、ノートと鉛筆の2つに分けなければならなかった。
簡単そうに見えるほど、人は文章を最後まで考えず、目についた数字だけで計算してしまう。
この問題で試されていたのは、引き算の力ではない。
自分の答えを、もう一度問題の条件に戻して確かめる力だった。
鉛筆が60円なら、合計は160円。
その一度の確認だけで、間違いにはすぐ気づける。
正解は30円。
小学生向けの短い問題だったが、大人ほど勢いよく「60円」と答えてしまう、見事な落とし穴だった。