「かつて心から誠実に接していた人たちを思い出すと、吐き気がする」
そう思った瞬間、本当に胃の奥がひっくり返った。
私は駅のトイレに駆け込み、個室の中で紙袋を握りしめていた。
手が震えていた。
額には冷たい汗。
スマホの画面だけが、妙に明るかった。
そこに並んでいたのは、昔の仲間たちのメッセージだった。
私がずっと大切にしていた人たち。
困っていたら助けた。
相談されたら夜中でも返事をした。
お金が足りないと言われれば、理由も聞かずに貸した。
仕事でミスをしたと聞けば、資料を直してあげた。
私は、それを「友情」だと思っていた。
でも、向こうは違ったらしい。
画面には、こう書かれていた。
「また頼めばやってくれるでしょ」
「真面目すぎて逆に使いやすい」
「断れないタイプって得だよな」
その文字を見た瞬間、息が止まった。
笑えなかった。
泣くより先に、胃が拒否した。
そのグループチャットを見つけたのは、偶然だった。
数日前、昔の友人だった亮太から連絡が来た。
「久しぶり。ちょっと相談したいことがある」
懐かしい名前だった。
大学時代、同じゼミでいつも一緒にいた男だ。
明るくて、人当たりがよくて、周りから好かれていた。
ただ、少しだらしないところがあった。
レポートの締切を忘れる。
飲み会の会計で財布を出すのが遅い。
困った顔で「悪い、助けて」と言う。
私はそのたびに手を貸した。
当時は、それが嬉しかった。
頼られていると思っていた。
今思えば、ただ便利だっただけだ。
亮太の相談は、会社の企画書を見てほしいというものだった。
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