親代わりに育てた妹が、高校卒業の日にわずか10分で帰ってきた。
「お兄ちゃん……」
玄関に立っていた花の顔を見た瞬間、俺は何かがおかしいと感じた。
今日は花の卒業式の日だった。本当なら俺も出席して、誰よりも先に「卒業おめでとう」と言ってやりたかった。
しかし、急な仕事が入り、どうしても抜けられなかった。
「ごめんな、花。せっかくの卒業式なのに行けなくて」
そう言った俺に、花はいつもの笑顔で首を振った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。高校の卒業式って、親が来られない人も結構いるから。それより……大学に行ったらいっぱいバイトして、お兄ちゃんに恩返しするね」
「そんなこと考えなくていい。大学生は勉強するのが一番大事だ」
俺はそう答えた。
花には知られたくなかった。
俺が高校へ進学せず、働き続けた理由を。
父親は、花が母のお腹にいる時に亡くなった。
そして母も、花がまだ二歳の時に病気で亡くなった。
残されたのは、中学生だった俺と、幼い妹だけだった。
普通なら施設に入る選択もあったかもしれない。
でも、俺にはできなかった。
たった一人の妹を、絶対に守ると決めたからだ。
そんな俺たちを支えてくれたのが、アパートの大家だった和子さん夫婦だった。
「誠くん、花ちゃんを本当に大事に育ててきたわね」
卒業式の日の朝、和子さんはそう言ってくれた。
「私たちは何もしていないわ。ただ、あなたたちがここにいられる場所を残しただけ」
俺にとって和子さん夫婦は、もう家族同然だった。
そんな温かい時間は、突然終わった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Dak7l5aDVIk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]