私が義実家に仕送りを始めたのは、結婚してすぐのことでした。夫の奨学金返済と家計を両立しながら、それでも「親に苦労はさせたくない」と言う夫の顔を見て、私は毎月きっちり三十一万円を振り込んでいました。通帳の引き落とし履歴が増えるたび、胸の奥に小さな痛みはありましたが、家族として必要なことだと自分に言い聞かせてきたのです。
ところが、ある月のこと。
義母から珍しく電話が入り、開口一番、怒鳴り声が飛んできました。
「月二十万円も送金してくれる義妹を見習え! お前からの仕送り七十円って舐めてんのか?!」
一瞬、言葉が理解できませんでした。七十円。私が送っているのは三十一万円です。誤解だろうと思い、落ち着いて確認しました。
「通帳、見間違いではありませんか。私は毎月三十一万円を――」
しかし義父が割り込み、さらに強い口調で畳みかけます。
「言い訳するな! 記帳したら『70』って出たんだ! こっちは恥をかいたんだぞ!」
私はその時、背筋が冷たくなりました。怒りよりも先に、異様な確信が走ったのです。数字が「70」と表示される状況は限られています。
たとえば、振込人名義や摘要を細工して“それらしく見せる”こと。もしくは、義妹が別の送金を上書きして見せた可能性。いずれにせよ、問題は金額ではなく、私が差し出したものが「なかったこと」にされ、嘲笑の材料にされたことでした。
私は静かに言いました。
「承知しました。では、仕送りをやめますね」
電話口が一拍、無音になりました。次に聞こえたのは、義母の乾いた笑いでした。
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