それは、何気ない夜だった。
仕事から帰宅し、いつものように寝室へ入る。ベッドのシーツを整えようとしたそのとき、白いシーツの上に一本の「毛」が落ちているのに気づいた。
最初は気にも留めなかった。だが、拾い上げた瞬間、胸の奥がざわついた。
明らかに、俺のものではない。色も太さも違う。
そして、嫁は定期的に処理している。長さも質感も一致しない。
(……なんだこれ)
ただの一本。だが、その一本が疑念の種になるには十分だった。
頭の中で最悪の想像が広がる。
俺が仕事で不在の時間は長い。嫁は専業主婦。自由な時間はいくらでもある。
問い詰めるか?
いや、証拠もないのに疑うのは危険だ。もし勘違いなら、関係は壊れる。
俺は冷静を装いながらも、内心では焦燥が渦巻いていた。
そして、決断した。
総額12万円。
小型の監視カメラを三台購入し、リビング、玄関、寝室に設置した。
「家虫」と自嘲しながら、俺は自宅を監視する男になった。
罪悪感はあった。だが、真実を知るほうが先だった。
設置翌日。
俺は出勤を装い、近所のカフェにノートパソコンを持ち込んだ。
ライブ映像を開く。
心臓の鼓動がやけに大きい。
――開始から3分。
嫁はいつも通り洗濯物を干している。
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