夕方のコンビニは、学校帰りの学生や仕事終わりの客でほどよくにぎわっていた。レジ前には期間限定のキャンペーンくじが並び、一定額以上の買い物をした客に一枚引かせる、よくある販促企画が行われていた。そんな中、一組の親子らしき客が店を訪れた。
買い物を終えたあと、レジの店員は何気ない調子で声をかけた。
「くじ引いてください」
ところが、その場でくじを引いたのは、まだ幼い女の子だった。
店員に言われるまま、女の子は素直に「OK」と答え、小さな手で箱の中からくじを一枚引き抜いた。微笑ましい光景に見えたが、次の瞬間、その場の空気が少しだけ変わる。女の子が引き当てた賞品は、まさかのビールだったのである。
当然ながら、酒類は未成年に渡せない。店員もそこはすぐに理解し、困ったようにしながら女の子へ尋ねた。
「お父さんかお母さん、一緒ですか?」
すると女の子は、悪びれる様子もなく無邪気に答えた。
「お父さん、車にいて……」
その一言で、店員はようやく事情を察した。おそらく父親が会計を済ませたあと、何らかの事情で車へ戻り、くじだけ娘に任せたのだろう。しかし相手がビールとなれば話は別だ。
店員は慎重に対応し、「じゃあ、お父さんを呼んできてね」とやさしく伝えた。
女の子は元気よく店を飛び出していった。店員も、すぐに父親がやって来て事情を説明し、問題なく受け取って終わるはずだと思っていたに違いない。店内の空気も特に張りつめることなく、誰もがほんの短い出来事として流していた。
だが、しばらくして再び自動ドアが開いたとき、そこに現れたのは、先ほどの女の子一人だった。
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