和寿子(かずこ)は、今日が最後の給料日であることを知っていた。70歳になった彼女にとって、この日が長いキャリアの締めくくりの日だ。二十年間、会社の廊下を誰よりも早く磨いてきた和寿子は、その日も普段と変わらず出勤した。しかし、心の中では、どこか寂しさと達成感が入り混じっていた。
和寿子は、毎朝出勤するたびに、清掃用具を手に持ち、誰よりも早く会社に到着していた。
その日も、朝早くに会社に着いたが、いつもと同じように誰からも声をかけられることはなかった。「おはようございます」と声をかけても、社員たちは反応しなかった。彼女はまるで空気のような存在だった。
それでも、和寿子は黙々と仕事を続けた。彼女にとって、掃除の仕事はただの仕事以上のものだった。それは自分の誇りであり、生活の一部であり、毎日の習慣そのものであった。しかし、今日がその最後の日だと思うと、モップを握る手に少し力が入った。
清掃員としての最後の出勤
翌朝、和寿子はいつも通り、早朝に会社に向かった。今日は最後の出勤だとわかっているが、彼女は変わらず静かな気持ちで出発した。その日もモップを持ち、廊下を掃除していると、社員食堂の奥から声がした。
「もうそんなに早く来なくていいですよ。」
振り返ると、そこには経理の若い女性が立っていた。和寿子は笑顔で答えた。
「早く来るのが癖みたいなものでね。」
その言葉に、女性は少し驚きながらも、やはり笑顔で頷いた。その後も、和寿子はいつものようにモップを持ちながら、会社の廊下を掃除し続けた。周囲がどんなに忙しくても、彼女にとってはこの仕事が、朝一番に始めるべきことだった。
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