その日、私は十五年間続いた結婚生活に静かな終止符を打った。
リビングのテーブルに置いた離婚届の控えを見つめながら、不思議なほど涙は出なかった。元夫・黒川和也を責めたい気持ちも、怒鳴りたい気持ちもなかった。ただ、これから先の人生を自分自身のために歩くため、必要な整理を始めようと思っただけだった。
最初に手をつけたのは、長年利用していた四枚のブラックカードだった。
そのうち三枚には、和也の家族カードが発行されていた。結婚当初は、それが夫婦の信頼の証だと思っていた。旅行代金、急な出費、義母・佳代子さんの医療費まで、すべて便利に処理できる仕組みだったからだ。
しかし、離婚した今、その関係は終わった。
私はカード会社へ順番に電話をかけた。
「黒川美咲です。本日付で契約を終了したいと思います」
担当者は驚いた様子だった。長年の利用者から突然の解約依頼だったからだ。
「ご家族会員様のカードも同時に停止となりますが、よろしいでしょうか」
私は迷わず答えた。
「はい。すべて停止してください」
家族カードだけを止める方法もあった。しかし私は、古い関係そのものを整理することにした。
和也は長い間、私の信用によって提供される特別なサービスを当然のように使っていた。空港ラウンジ、コンシェルジュサービス、高額決済の信用。それらは決して彼自身が築いたものではない。
離婚後まで、私の信用を彼に預ける理由はなかった。
ただ、その時の私は知らなかった。
和也と佳代子さんが、そのカードと私の資産を「まだ自分たちのもの」だと思い込んでいたことを。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=hrTG1hXjKcM,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]