「これからの生活費は、折半ということでお願いしますね」
息子夫婦との同居初日の夕食時、嫁の美穂さんが淡々と口にしたその言葉を聞いた瞬間、胸の奥に冷たい風が吹き抜けました。
新築された二世帯住宅の広々としたダイニングには、私が朝から時間をかけて作った料理が並んでいました。
息子の新しい生活を祝いたい。
これから家族三人で穏やかな時間を過ごしたい。
そんな期待を胸に、私は久しぶりに腕を振るったのです。
けれど、向かいに座る直輝と美穂さんの表情には、喜びも感謝もありませんでした。
「母さん、二人の新居に一緒に暮らせるなんて、本当に嬉しいわ。三十二年間、助産師として働いてきた甲斐があったと思っているの」
私がそう言うと、美穂さんは箸を置き、静かな声で続けました。
「お母さん、大人二人と一人の生活になるんですから、費用を分けるのは当然ですよね」
その瞬間、時間が止まったように感じました。
けれど私は、すぐに微笑みました。
「そうね。二人がそれが良いと思うなら、そうしましょう」
直輝と美穂さんは安心したように顔を見合わせました。
しかし、その時すでに私の中では、ある決意が静かに芽生えていたのです。
私はこれまで、誰かのために生きてきました。
夫を亡くしたのは、直輝がまだ小学三年生の時でした。
悲しみに沈んでいる時間などありませんでした。
助産師として夜勤をこなしながら、女手一つで息子を育てる毎日。
疲れ切った体で帰宅しても、直輝の弁当を作り、学校行事にもできる限り参加しました。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=E62jBp5xCCs,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]