東京郊外の雑司が谷。古びた木造家屋にひっそりと暮らす一人の男、祐介。彼の家は壁の塗装が剥がれ、屋根には苔が生え、湿った空気が充満する、まさに「ボロボロ」と言って差し支えない。しかしこの家こそが、億万長者・祐介の本当の素顔を隠す仮面だった。

彼はある理由から、この家で慎ましい生活を装っていた。理由――それは「真実の愛」を見つけるため。

資産や外見ではなく、心で繋がる伴侶を求めていた。

ある日、恋人の綾香をこの家に招いた。彼女は玄関先で絶句した。「こんな所で暮らしてるなんて、信じられない！」という声には、驚きと苛立ちが滲んでいた。祐介は「見た目は良くないけど、中はあたたかいんだ」と微笑むが、綾香の反応は冷ややかだった。「こんな湿った空気、カビ臭い布団、ありえない！」彼女はそう言い残し、怒りをぶつけるように去っていった。

玄関に残された祐介と母・幸子。

彼女は静かに言った。「あの子は、うちの嫁にはなれないよ」。その言葉には、長年の経験と信念が込められていた。

数日後、祐介は新たな女性・美穂を連れてくる。しかし、美穂もまた、家の不便さを前に次第に不満を募らせていく。「外にあるトイレなんて無理」「アパートぐらい借りてよ」と口にした時点で、幸子は察した。この女性もまた、金銭的な快適さを重視するタイプだと。

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