うちが経営する小さな月極駐車場は、派手さはないが地域では重宝されている。駅まで徒歩圏で、契約者はほぼ固定。だからこそ「空きがない」という信頼が成り立っていた。
ある日、その駐車場に見覚えのないミニバンが停まっていた。区画番号は契約者がいる場所だ。私はすぐ管理台帳を確認したが、該当車両は登録されていない。契約者に連絡すると、案の定こう言われた。
「私の車じゃないです。今日、停めてないです」
嫌な予感がして車内を覗くと、ダッシュボードに手書きのメモが挟まっていた。
『ごめん!ちょっと停めさせて!すぐ戻るから!』
筆跡に見覚えがあった。ママ友のA子だ。子ども同士が同じクラスで、行事のたびに顔を合わせる程度の関係。私はすぐA子に電話した。
「A子さん、うちの駐車場にあなたの車が停まってるんだけど、契約区画じゃないよ。至急移動できる?」
数コール後、出たA子は驚くほど軽い声だった。
「あ、見つかっちゃった? だって空いてるように見えたんだもん」
「空いて見えても契約区画。無断駐車は困るよ」
するとA子は、笑いながらとんでもないことを言った。
「今から海外出張なんだよね。2年後に取りに行くねw」
私は一瞬、言葉が出なかった。冗談に聞こえたが、背景には空港のアナウンス音が混じっていた。冗談ではない。
「2年って……。駐車料金も発生するし、契約者にも迷惑がかかる。今すぐ家族に動かしてもらって」
「えー大げさ。友達でしょ? 置いといてよ。帰ったら謝るから~」
通話はそのまま切られた。
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