私は、十年ぶりに娘の家を訪ねることにしました。娘、猫子（ねここ）の声が聞こえたその瞬間、私の心臓は一瞬止まりそうになりました。久しぶりに聞くその声に、懐かしさと同時に不安な気持ちが入り混じっていきました。大阪に住んでいる私は、六十五歳になり、夫と小さな居酒屋を営んでいます。二十五年前、私の一人娘、ゆきが大企業の課長と結婚したとき、本当に嬉しかったのです。

娘婿は礼儀正しく、娘も幸せそうに見えました。それ以来、二十五年間一度も娘のことを疑ったことはありませんでした。しかし、その日は違いました。娘が苦しんでいるなんて、夢にも思っていなかったのです。

その朝、私はいつも通り早く起きてお茶を飲んでいました。娘がお母さん、ちょっと待ってと言って台所に行くと、突然、寝室から娘婿の声が聞こえてきました。「おい、このバカ女、服がなんだよ、これ。お前の母親が来るのマジでウザいんだよ。」その言葉を聞いた瞬間、私の指先は震えました。目の前が真っ暗になり、息が詰まるような感覚に陥ったのです。

寝室のドアが少し開いていて、私は思わずその中を覗いてしまいました。

娘婿のひどい言葉に、胸が痛みました。中を見た瞬間、私は思わず息を呑みました。娘は頭を下げて震えていたのです。その光景が、私には耐え難いほど辛く、ショックでした。

娘婿が出勤した後、私はすぐに娘の部屋をこっそり調べました。引き出しを開けると、そこに見覚えのある薬が入っていたのです。それは、娘の病気の薬でした。その隣には、「離婚相談予約」というメモがあったのです。

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