会議室で一人、待たされていた俺の前に、五十代ほどの男が入ってきた。
作業着姿の俺を一瞥すると、彼は鼻で笑うように言った。
「ああ、お前あれだろ。下請けの……なんて言ったっけ」
一瞬、言葉を失った。
ここは取引先の会社の会議室だ。最低限の礼儀すらないその態度に、内心で眉をひそめながらも、俺は名刺を差し出した。
「こちら、名刺です」
しかし男は、受け取るどころか手も伸ばさない。
「下請けの名刺なんていらねえよ」
その瞬間、理解した。
目の前の男が、今回の担当者――飯田建設の課長・加藤なのだと。
俺の名は中山。四十五歳。
父から継いだ建築会社の社長であり、今回の大規模土地開発――総額七十二億円規模のプロジェクトを取りまとめる立場にある。
マンション、商業施設、病院、保育園。
地域の未来を左右するこの事業は、協力会社なくして成立しない。
だからこそ俺は、下請けという言葉を嫌い、「協力会社」と呼び続けてきた。
だが、加藤は違った。
「うちが下請けで使ってやってるから、お前らみたいな小さい会社も食えてるんだぞ」
そして極めつけに、こう言い放った。
「今から大口商談だ。下請けは邪魔だから、とっとと失せろ」
開いた口が塞がらなかった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=3mwdcGpn-WQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]