取引先へ退職の挨拶に向かったその日、私はすでに嫌な予感を覚えていた。
会議室に入ると、そこには松田部長と、いわゆる「エリート軍団」と呼ばれる高学歴の部下たちが並んで座っていた。彼らは以前から一貫して、私を「中卒」という理由だけで見下してきた連中だ。
「で、坂本。転職するらしいな」
松田部長は、最初から嘲るような笑みを浮かべていた。
「中卒無能の転職先、教えろよ」
それに呼応するように、周囲の部下たちが吹き出す。
「底辺で言えないか?」
「どうせ聞いたこともない零細だろ?」
私は黙って立っていた。
彼らは知らない。私がどこへ転職するのかを。
そして、この後、自分たちのプライドが粉々に砕け散ることも。
私の名前は坂本、二十九歳。
父はいない。非正規で働く母が、女手一つで私を育ててくれた。生活は常にギリギリで、高校進学は現実的ではなかった。
母を少しでも早く楽にしたい、その一心で私は中卒で社会に出た。
建設資材の製造会社に就職し、現場で必死に働いた。誰よりも汗をかき、仕事を覚え、二十七歳で主任に昇進。二十八歳で本社勤務となった。中卒の現場叩き上げが本社に行くのは、極めて異例だった。
そんな私を支えてくれたのが、取引先担当の吉岡さんだった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=jCCX67RRHTI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]