八年ぶりに本社へ足を踏み入れたその日、私は自分の立場を「臨時社員」としていた。
だがそれは表向きの顔にすぎない。実際には、私は内部監査として極秘任務を帯び、この部署に潜り込んでいた。
製造部の部長である金村は、私の顔を見るなり露骨に顔をしかめた。
「なんだ、その年で臨時か。無能ジジイは会社のお荷物だろ。
意味、わかる?」
周囲にいた若手社員が、気まずそうに視線を逸らす。
私は怒りを表に出さず、静かに答えた。
「……よーく、わかりました」
その一言で、金村は勝ち誇ったように鼻で笑った。
だが彼は知らない。私が八年前、品質管理の厳格さを理由に子会社へ出向させられた人間であり、その後、現場と管理の両面で実績を積み、今回の内部監査を任された存在だということを。
翌日から私は、雑用をこなしながら製造ラインを観察した。
安全基準は形骸化し、品質検査は意図的に省略され、検査表には修正テープの跡が残っている。不良品を合格に見せかける、稚拙だが悪質な改ざんだった。
さらに、請求書を調べると、同一製品の単価が不自然に三割も引き上げられている。
取引先の確認体制の甘さを突いた、明確な水増し請求だった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=k-75SIyscak,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]