東京本社のガラス張りのビルを見上げたとき、胸の奥がわずかに熱くなった。――ここに来るのは初めてだ。地方の小さな支社で汗を流してきた俺にとって、本社は別世界だった。
俺の名は神谷 恒一。二十四歳。学歴は中卒。事情があって高校へは進めず、十六で働き始めた。最初は倉庫の荷役、次は配送、夜は伝票整理。だが、現場で鍛えられたのは腕だけじゃない。
数字の癖、在庫の流れ、客の不満の根っこ――“現場の答え”が見えるようになった。
支社ではそれが評価され、最年少で改善担当に抜擢された。そして、物流改革の重要会議に呼ばれた。東京本社で、全国の支社を統合する新プロジェクトが動く。その席に、なぜか「支社代表」として俺の名前が入っていた。
正直、怖かった。けれど同時に、誇らしかった。
「神谷、お前が一番現場を知ってる。余計な遠慮はするな」

支社長がそう言って背中を押してくれたのだ。
会議室の前に着くと、扉の横に「重要会議につき関係者以外立入禁止」の札がある。腕時計を見る。開始五分前。俺は深呼吸して、ノックした。
「失礼します。神谷です。本日――」
扉が開きかけた瞬間、背広姿の男が腕を伸ばし、俺の胸を軽く押し返した。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=UM04LpoS-70,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]