入社初日の朝、胸の内には小さな期待があった。
長年、同業界で培ってきた営業の経験を買われ、私は中堅企業「東都テック」に中途入社した。待遇も悪くない。何より「実力主義で、現場に裁量を与える」という採用担当の言葉が決め手だった。――ここなら、もう一度勝負ができる。そう思っていた。
だが、期待は受付の前で粉々に砕けた。
フロアの中央に、妙に派手なスーツを着た若い男がいた。年は二十代前半だろう。社員が挨拶しても、まともに返事をしない。代わりに、スマホをいじりながら大声で笑っている。
案内係が小声で耳打ちした。
「彼、社長の息子さんで……次期社長候補です」
嫌な予感がした。そういう“家柄”が実力主義を壊す場面を、私は何度も見てきたからだ。
そして、その予感は的中する。
朝礼のあと、簡単な自己紹介を求められた。私は名乗り、前職での実績を端的に述べ、これから貢献したいと頭を下げた。すると、その若い男――社長息子の城島蓮が、椅子にふんぞり返ったままニヤついた。
「へえ。中途? 偉そうにしゃべるじゃん」
周囲が笑う。社内の空気は妙に軽い。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=qNQZ7GTNVbc,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]