京都駅を9時36分に発車した上りの新幹線。ほぼ満席の2号車へ乗り込んだ私は、自分の指定席を見て思わず足を止めた。
窓側から通路側まで、3席すべてを使って男性が横になっていたのだ。しかも靴を履いたまま、座席の上に両足を乗せて熟睡している。
「すみません。そこ、私の席なんですが」
声をかけても反応はない。もう一度少し大きな声で呼ぶと、男性は面倒そうに片目を開けた。
「ほかの席、空いてるでしょ」
謝罪どころか、起き上がる気配すらない。
「指定席なので、ここに座ります」
私が切符を見せると、男性は露骨に顔をしかめた。
「ちょっとぐらい寝かせてくれてもいいじゃん。細かいな」
周囲の乗客もこちらを見ていたが、車内はほぼ満席。私が移れる席など見当たらなかった。
男性の言い方に腹が立ったものの、言い争っても仕方がない。私は静かに車掌を呼び、指定席券を見せて事情を説明した。
やって来た車掌が男性に尋ねた。
「お客様、3席分の指定席券を確認させていただけますか」
すると男性は不機嫌そうに、スマートフォンの画面を1枚だけ見せた。
購入していたのは、窓側の1席だけだった。
「こちらの2席は、別のお客様が予約されています。靴を履いたまま座席へ横になる行為もお控えください」
車掌がはっきり告げると、男性はようやく体を起こした。しかし、まだ納得していない様子で私をにらんだ。
「空いてたから使っただけだろ。いちいち車掌まで呼ぶ?」
その瞬間、後方から別の女性が口を開いた。
「その通路側、私の席です。さっきから座れずに待っていました」
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