深夜2時17分。
また、部屋に赤ちゃんの泣き声が響いた。
「お願い…もう少しだけ寝てくれないかな」
私は暗い部屋の中で、何度も息子を抱き上げた。
背中をトントンしても泣く。
ミルクをあげても泣く。
オムツを替えても泣く。
生まれてまだ数か月。
この小さな命は、一生懸命「何か伝えよう」と泣いているだけ。
頭では分かっていた。
赤ちゃんが泣くのは当たり前。
でも、集合住宅で暮らしている私は、別の不安に押しつぶされそうになっていた。
「隣のおばあちゃん、眠れているかな…」
「下の階のご家族、迷惑に思っていないかな…」
壁一枚向こうには、私たちとは違う生活がある。
朝早く仕事へ行く人。
夜勤から帰って寝ている人。
静かな時間を大切にしている人。
そう考えるほど、息子が泣くたびに胸が痛くなった。
もちろん、泣き止ませようと毎日必死だった。
抱っこして部屋の中を歩き回る。
窓を閉める。
できる限り音が響かないように工夫する。
でも、赤ちゃんの泣き声だけは完全には消せなかった。
ある夜、夫に言った。
「一度、ちゃんと謝ったほうがいいかな…」
夫は少し考えて、
「悪いことをしているわけじゃないよ。でも、気持ちを伝えるのは大事かもしれないね」
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