「ねぇ、一度サイゼリヤっていうお店に行ってみたい」
実家に帰った日のことだった。
母が突然、そんなことを言った。
少し意外だった。
母は父と2人で、郊外の一軒家に暮らしている。
家の前には大きな公園がある。
でも最近は、そこで遊ぶ子どもの姿を見ることはほとんどない。
昔は聞こえていた笑い声も、
走り回る足音も、
いつの間にか少なくなっていた。
家の中はいつも静か。
父と母の2人だけの時間。
そんな生活が当たり前になっていた。
だから私は、
「じゃあ、一緒に行ってみようか」
と母を連れてサイゼリヤへ向かった。
店に入った瞬間。
母の表情が少し変わった。
周りには家族連れがたくさんいた。
小さな子どもを連れた夫婦。
ベビーカーを押すお母さん。
元気いっぱい話す子どもたち。
店内には、
「ママ!」
「これ食べたい!」
という声が響いていた。
赤ちゃんの泣き声も聞こえた。
私は少し気になった。
「うるさく感じないかな?」
高齢の母には、落ち着かない空間かもしれないと思った。
でも、食事が終わった後。
母に感想を聞くと、予想もしない答えが返ってきた。
「子どもの声がすごくうるさくて……」
一瞬、私はドキッとした。
でも母は続けた。
「それが、すごく良かった」
私は思わず聞き返した。
「え?」
母は笑いながら言った。
「みんな元気やなぁって思った」
「大きな声で泣いて、大きな声で笑って、ご飯をこぼして……」
「生きてる感じがするやん」
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