「ごめん、ちょっと車貸してくれない?」
そう頼んできたのは、10年以上付き合いのある友人だった。
私は少し迷った。
なぜなら、その車はただの移動手段ではなかったから。
愛車のラパン。
初めて自分のお金で買った車だった。
納車の日、嬉しくて何枚も写真を撮った。
小さな傷がついた時も、すぐに洗車して大切にしてきた。
車内にはお気に入りの小物を置き、
休みの日には少し遠くまでドライブした。
私にとっては「車」ではなく、思い出が詰まった相棒だった。
でも友人は困った様子だった。
「明日だけでいいから」
「絶対気をつけるから」
その言葉を信じて、私は鍵を渡した。
「無理な運転だけはしないでね」
そう笑って送り出した。
まさか、その数時間後にあんな姿を見ることになるなんて思わなかった。
翌日。
スマホを見ると、友人から1件のメッセージが届いていた。
「ごめん、事故った」
たったそれだけ。
詳しい説明もない。
私は一瞬、意味が理解できなかった。
「ケガは大丈夫?」
「車はどうなったの?」
すぐに返信した。
すると返ってきたのは、
「俺は大丈夫。車はレッカー呼んだ」
という短い返事。
急いで現場へ向かった。
そして、そこにあったのは……
レッカー車に乗せられた私のラパンだった。
フロント部分は大きく傷つき、
いつも見慣れていた姿とは全く違っていた。
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