もし自分の寿命に、残り時間が見えるタイマーが付いていたら——
あなたは年金を、いつから受け取るだろうか。

俺の名前は港川しげる。59歳。
定年まで、あと1年。

40年間、油と汗にまみれて働いてきた人生の終盤で、俺は初めて「時間」と「金」を天秤にかけることになった。

きっかけは、職場の山部長の突然の死だった。

葬儀の帰り道、同僚の藤島と並んで駅まで歩いた。
「なあ港川、お前は定年後どうする？ 年金、まさか繰り上げは考えてないよな？」

図星だった。

年金は60歳から75歳の間で自由に選べる。
だが、60歳で繰り上げると1か月0.4％減額。

つまり、

65歳受給：月15万円

60歳繰り上げ：24％減 → 月11万4,000円

年間では、約43万円の差になる。

「損に決まってるだろ」
藤島はそう言って、得意げに続けた。

「損益分岐点って知ってるか？
60歳で繰り上げた場合、65歳受給と

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