最初は、ただの腰痛だと思っていました。
朝起きると背中の奥が重だるく、湿布を貼れば少し楽になる。年を取ればこんなものだろう、と自分に言い聞かせていました。仕事も家事も休めない。病院へ行くほどではない――そう思って、何週間も、何か月もやり過ごしてしまったのです。
ある日、妻に言われました。
「最近、顔色が黄色くない?」
鏡を見ると、確かに白目が少し濁っている。尿もなんとなく濃い色になっていました。でもその時の私は、疲れのせい、寝不足のせい、と軽く考えてしまいました。
食欲も落ちていました。大好きだった焼肉を前にしても、箸が進まない。体重が減っているのに、なぜか怖くて体重計には乗らなくなっていました。
それでも病院に行かなかったのは、
「大げさにしたくない」
「がんだったらどうしよう」
そんな気持ちが心のどこかにあったからです。
腰の奥の鈍い痛みが、ある日突然、我慢できないほど強くなりました。背中を伸ばしても、丸めても楽にならない。夜も眠れず、ようやく受診した内科でCTを撮ったその日の午後、私は別室に呼ばれました。
医師の口から出た言葉を、今でもはっきり覚えています。
「すい臓がんです。かなり進行しています。
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