俺の名前は竹崎良一、四十歳。現在は営業部に所属しているが、もともとは人事部で採用業務に携わっていた。だから面接の流れ自体は理解している。とはいえ、数年前に人事を離れてからは現場一筋で、まさか今になって急きょ面接官の代役を頼まれるとは思ってもいなかった。
その日、人事担当の若手社員が青い顔で俺のもとへ駆け寄ってきた。
「竹崎さん、申し訳ありません。今日の最終面接、大林部長が体調不良で来られなくなってしまって……代わりをお願いできませんか」
大林とは同期だ。若い頃は互いに競い合い、励まし合う間柄だった。だが、彼は出世して以降、面倒な仕事になると「体調不良」を理由に席を外すことが増えた。今回も嫌な予感はあったが、採用は会社の未来を左右する大事な仕事だ。断る理由はなかった。
「わかりました。資料を見せてください」
応募者一覧に目を通していた俺は、ある名前で手を止めた。大林美香。部長の娘だった。大林が娘を溺愛していることは社内でも有名だ。その彼が、自分の娘が面接を受ける日に限って欠席する。
偶然とは思えなかった。
だが、先入観を持つつもりはなかった。親が誰であれ、面接の場では一人の候補者として公平に見る。それが採用に関わる者の最低限の責任だ。
面接は順調に進んだ。どの学生も緊張しながらも懸命に自分を伝えようとしており、こちらも真剣に向き合う価値があった。そして最後に、美香が入室した。見た目は明るく、自信に満ちた表情をしていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=xaV-eoTqs70,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]