俺の名前は俊雄、四十歳。妻の結衣と中学一年生の息子・純也と三人で、代々受け継いできた農地を守りながら米や野菜を育てている。もともとは会社員として働いていたが、数年前に父が倒れたのをきっかけに、母一人では支えきれなくなった家業を継ぐ決意をした。農業は甘い世界ではない。天候ひとつで収穫量は変わり、害虫や病気との闘いもある。
それでも家族で力を合わせ、ようやく地元でもそれなりに知られる規模の農家として軌道に乗せることができた。
だが、そんな日常が崩れ始めたのは、畑の近くに新しいアパートが建ってからだった。
建設後まもなく、大家だという村上という男が妻と一緒に挨拶に来た。五十代後半ほどの穏やかな口調の男で、「入居者にはしっかりマナーを守らせますのでご安心ください」と丁寧に頭を下げていた。隣にいた奥さんも上品そうな雰囲気で、その時の俺たちは、少し不安を抱きつつも「しっかりした人たちでよかった」と思ったものだ。
ところが、それからほどなくして異変が起きた。
最初に気づいたのは妻だった。
「あなた、畑のトマト、昨日より減ってない?」
言われて見に行くと、たしかに収穫した覚えのない分が少しなくなっていた。最初は鳥か獣の仕業かとも思った。だが、その後もナス、キュウリ、トウモロコシ、そして収穫間近の米まで、少しずつ、しかし確実に減っていった。やがて被害は目に見えて拡大し、ある朝にはトウモロコシがごっそり消えていたことさえあった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=4zWegohdBfo,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]