俺の名前は大空返。二十八歳。都内のシステム会社で、システムエンジニアとして働いている。入社して三年、ようやく念願だった企画設計チームへの配属が決まり、これからが勝負だと胸を躍らせていた。だが、その希望は、直属の上司である買沼主任の存在によって、少しずつ踏みにじられていった。
買沼主任は、なぜか最初から俺を目の敵にしていた。
会議では意見を遮られ、雑務ばかり押しつけられ、明らかに無理のある納期の案件まで平然と回される。周囲の先輩たちも最初は気にかけてくれていたが、皆それぞれ自分の業務で手一杯になり、気づけば俺は完全に孤立していた。
それでも耐えられたのは、子どもの頃から機械や工場に親しんでいたからだ。祖父は小さな部品工場を営んでいて、俺は幼い頃からその背中を見て育った。将来は工場を継ぎたいと思ったこともある。だが中学の頃、祖父が亡くなり、父は工場を手放した。あのとき感じた喪失感は、今でも消えていない。だからこそ、ものづくりの現場に関わる仕事に就きたい一心で、情報系の大学へ進み、今の会社に入ったのだった。
転機は、買沼主任が起こした重大なミスだった。大口取引先向けの制御ファイルを誤って上書きし、納品直前のデータを破損させたのだ。幸い先方がすぐに異変に気づき、致命的な被害は避けられたが、取引停止寸前まで話はこじれた。社長が自ら謝罪に出向いたことで何とか収拾はついたものの、社内の空気は険悪になった。
そして、その直後に俺の異動が発表された。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=wqpSjFihEhE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]