昼休みに入った食堂だった。
特別に高い店ではない。
注文したのも、ごく普通の定食。
値段は730円。
私は料理を食べ終え、レジへ向かった。
「QUICPayでお願いします」
店員が端末を操作する。
私はスマートフォンをかざした。
ピッ。
聞き慣れた決済音が鳴った。
「ありがとうございました」
店員にそう言われ、私は店を出た。
何もおかしいとは思わなかった。
730円。
昼食代としては普通の金額だ。
ところが、店を出て数分後。
スマートフォンが振動した。
カードの利用通知だった。
私は歩きながら画面を開いた。
そして、その場で足が止まった。
表示されていた金額は、
73,100円。
最初は、見間違いだと思った。
桁を読み違えたのかもしれない。
別の買い物の通知が、今になって届いたのかもしれない。
でも、時刻は13時10分ごろ。
利用場所も、今出てきた食堂。
決済方法はQUICPay。
どう見ても、さっきの会計だった。
私は何度も画面を拡大した。
730円ではない。
7,300円でもない。
73,100円。
定食百食分だ。
心臓が急に速くなった。
カードの利用限度額。
口座の残高。
この後に予定している支払い。
いろいろなことが一気に頭へ浮かんだ。
私はすぐ店へ戻った。
レジには、さっきの店員がいた。
「すみません、先ほどQUICPayで支払った者ですが」
店員がこちらを見る。
私はスマートフォンの画面を見せた。
「730円のはずが、73,100円になっています」
店員は一瞬、画面を見た。
そしてレジ端末を確認した。
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