「こんな冷たい店、二度と来ない」
あの夜。
私は本気でそう思っていた。
ゴールデンウィークの夜。
久しぶりの連休だった。
本当なら夫とゆっくり食事を楽しむ予定だった。
でも。
その日の夕方。
夫が突然言った。
「なんか体が重い……」
顔色も少し悪かった。
私は心配になった。
「今日は家で休む?」
そう聞いた。
でも夫は首を横に振った。
「せっかくの休みだし、焼き鳥くらいなら食べられるよ」
夫がそう言うならと思い。
近所の焼き鳥屋へ向かった。
店の前に着いた瞬間。
私は足を止めた。
入口のガラスに貼られた一枚の張り紙。
そこには大きな文字で。
「当店は香み屋です」
「必ず全てのお客様にお酒のご注文をしていただきます」
そして。
「水だけでいい、我慢する」
「焼き鳥が美味しいと聞いた」
などの理由は一切受け付けておりません。
「どうぞ他店へお帰りください」
と書かれていた。
私は思わず眉をひそめた。
「え……?」
正直。
感じが悪いと思った。
体調が悪くてお酒を飲めない人もいる。
それなのに。
水だけではダメ?
そんな店があるなんて思わなかった。
でも。
夫は本当に辛そうだった。
私は店内へ入り。
店主らしき男性に声をかけた。
「すみません」
「主人、今日は体調が悪くて……」
「お水かソフトドリンクだけでも大丈夫でしょうか?」
すると。
50代くらいの店主は。
少しも迷わず答えた。
「申し訳ありません」
「当店のルールですので」
「お酒を注文されない場合は、他のお店をお願いします」
その瞬間。
私は怒りが込み上げた。
「具合が悪い人にもそんな対応するんですか?」
心の中でそう叫んでいた。
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