「もう限界……」
私はテーブルの上に積み重なった紙を見ながら、初めて声に出して泣いた。
そこにあるのは。
夫が何年も私に渡し続けてきたメモだった。
一枚。
また一枚。
気付けば数十枚になっていた。
「味噌汁の味が薄い」
「弁当のおかずが少ない」
「洗濯物の畳み方が違う」
「朝食はもっと考えて」
「部屋の隅、掃除できてない」
毎日。
毎日。
私は夫から評価され続けていた。
まるで私は。
家族のために頑張る妻ではなく。
採点される家政婦のようだった。
結婚したばかりの頃。
私は夫のために頑張ることが幸せだった。
朝早く起きて朝食を作った。
夫の好きな料理を覚えた。
仕事から帰って疲れていても。
家のことを後回しにしなかった。
子どもが生まれてからは。
さらに忙しくなった。
夜泣きで何度も起きた。
熱を出した子どもを病院へ連れて行った。
幼稚園の準備も。
食事作りも。
全部私がやっていた。
でも。
夫はそんな私の努力を見ることはなかった。
夫が帰宅すると。
いつも同じだった。
ソファに座る。
スマホを見る。
テレビを見る。
そして。
家の中を見回して言う。
「ここ、まだ汚れてるよ」
「今日の夕飯、これだけ?」
「子どもの服、ちゃんと片付けた?」
私は何度も言いたかった。
「じゃあ、あなたは何をしてくれているの?」
でも。
言えなかった。
夫も仕事で疲れている。
そう思って我慢した。
家族だから。
私が支えればいいと思った。
でも。
ある日のことだった。
また夫から一枚のメモを渡された。
そこには。
「もっと妻として努力して」
と書かれていた。
その瞬間。
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