18時過ぎ、私は仕事を終えて特急列車に乗った。
指定されたのは通路側のC席だった。
座席へ荷物を置き、腰を下ろそうとした時、頭上に黒い物体があることに気づいた。
荷物棚へ載せられていたのは、折りたたみ式の大型ベビーカーだった。
本体は横向きに押し込まれていたが、車輪と金属製のフレームが棚の縁から突き出している。
しかも、落下を防ぐベルトなどは見当たらない。
列車が発車すると、ベビーカーは振動に合わせて小さく動き始めた。
金属部分が棚へ当たり、カタカタと音を立てた。
私は前方の席にいた持ち主らしい乗客へ声をかけた。
「すみません。あのベビーカー、落ちる心配はありませんか?」
乗客は頭上を見て答えた。
「折りたたんでありますし、車輪にもロックをかけています」
「でも、棚には固定されていませんよね。
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