「電気代、40,900円……?」
8月分の請求書を見た瞬間、私は思わず声を上げた。
使用量は1,340kWh。前年同月の1,169kWhより、171kWhも増えている。
夏休みに入り、中学生の息子と高校生の娘が毎日家にいた。朝からエアコン、テレビ、ゲーム機、スマートフォンの充電。覚悟はしていたが、4万円を超えるとは思っていなかった。
請求書を見た夫は、すぐに言った。
「エアコンを使いすぎなんだ。明日から昼間は禁止にしよう」
しかし、外は連日35度を超える暑さ。
「節約は必要だけど、エアコンを止めて体調を崩したら意味がないよ」
私が反対すると、夫は不満そうに請求書をテーブルへ置いた。
「じゃあ、どうやって4万円を払うんだ?」
その言葉に子どもたちも黙り込み、食卓の空気が重くなった。
私は誰か一人を責めるのではなく、まず原因を調べることにした。
翌朝から、電力会社の使用量データと家電の稼働時間をメモした。すると、昼間だけでなく、家族が寝ている深夜にも使用量がほとんど下がっていないことに気づいた。
午前1時、家の中を確認すると、息子の部屋ではゲーム機とパソコンがついたまま。
娘の部屋ではエアコンを18度に設定し、窓が少し開いていた。
さらに、夫が「飲み物専用」として物置に置いた古い冷蔵庫も、ほとんど空のまま24時間動いていた。
「エアコンだけが原因じゃなかったね」
翌朝、私は使用時間を記録した紙と写真を食卓に並べた。
息子はゲーム機の画面を見てうつむき、娘は「窓を閉め忘れてた」と謝った。
そして夫は、古い冷蔵庫の写真を見たまま黙っていた。
「昼間のエアコンは禁止だ」と一番強く言っていた本人の家電が、毎日電気を使い続けていたのだ。
夫はしばらくして、小さな声で言った。
「人のせいにして悪かった。冷蔵庫は今日片づける」
それから家族でルールを決めた。
エアコンは無理に切らず、温度を調整して扇風機と併用する。窓やドアを開けたまま使わない。ゲーム機とパソコンは終了後に電源を切る。
誰もいない部屋の照明も消す。
節約のために暑さを我慢するのではなく、無駄だけを減らすことにした。
1週間後、使用量のグラフは目に見えて下がった。
翌月の請求額は28,600円。まだ安いとは言えないが、前月より12,300円減った。
夫は新しい請求書を冷蔵庫に貼りながら、苦笑した。
「犯人はエアコンじゃなくて、家族全員の“つけっぱなし”だったな」
4万円を超えた請求書は痛かった。
けれど、誰かを責める前に数字を確かめること、そして暑さを我慢するより無駄を見直すことを、家族全員で学ぶきっかけになった。